
店舗に使われる素材は、商品と同じくらい、そのブランドのメッセージを伝えます。木材を選ぶこと、コンクリートを選ぶこと、金属を選ぶこと。それぞれの選択の背後には、来店者に何を感じさせたいかという意図があります。
01 木:温かみと時間の流れの感じ方
木材は、有機的な素材として、温かさと手仕事の感覚を空間に持ち込みます。特に、節や木目が見える無垢材は、「均一でないこと」の美しさを示します。日本の店舗では、杉や桧が使われることが多く、その香りも空間体験の一部になります。
ただし、木材の使い方によって印象は大きく変わります。磨き上げられた木材は格式を、荒削りのままの木材は素朴さを伝えます。同じ素材でも、仕上げの選択が空間のトーンを決めます。
02 コンクリート:正直さと都市的な質感
打ちっぱなしのコンクリートは、1990年代以降、日本の都市部の店舗で広く使われるようになりました。その魅力は、「隠さないこと」の誠実さにあります。仕上げ材で覆わず、構造体をそのまま見せることで、空間に率直な印象を与えます。
コンクリートは冷たく無機質な素材ですが、照明の色温度や什器の素材との組み合わせで、印象は大きく変わります。2700Kの電球色と組み合わせると、コンクリートの無機質さが和らぎ、独特の緊張感と温かさが共存する空間が生まれます。
03 金属:正確性と今性
スチールやアルミニウムなどの金属素材は、精度と現代性を空間に持ち込みます。溶接の跡を見せるか隠すか、表面を磨くか酸化させるか、これらの選択が金属の持つメッセージを変えます。
近年、日本の若い店舗では、意図的に錆びさせた鉄や、溶接跡を残したスチールシェルフが使われることがあります。「完成していないこと」を美学として提示する姿勢は、北欧の店舗デザインとも共鳴しています。
素材の選択を意識して店舗を見ると、その空間が何を大切にしているかが見えてきます。RetailAtlasの「照明と素材の読み方」モジュールでは、これらの素材を実際の店舗写真とともに詳しく扱っています。